「緑川行燈」俳句

俳句には、豊かな日本語でしか表現できない

 日本人の季節感、自然への畏れや憧れ、

生活や人生への愛情といった

 日本人本来の心の在り方や感じ方が、

長い年月をかけて、流れ込み、降り積もっています。

 

「緑川行燈」俳句は

これまでの多くの俳人たちに詠まれてきた

日本の故郷の美しい自然の風景、

日本人の謙虚で慎ましい生活、

そして、人生や自然や生活への愛情と豊かな感性を

思い出させてくれる俳句をご紹介していくことで

 

これから少しずつ消えていってしまうかもしれない故郷から

大切なことを見失ってしまった現代の日本の社会へ

最後のメッセージを伝えていくための企画です。

 

旅に病んで夢は枯野をかけ廻る     芭蕉

 

遠山に日の当りたる枯野かな      高浜虚子

 

生き変はり死にかはりして打つ田かな  村上鬼城

 

歩み来し人麦踏をはじめけり      高野素十

 

此道や行人なしに秋の暮        芭蕉

  

外にも出よ触るるばかりに春の月    中村汀女

 

春風や闘志いだきて丘に立つ      高浜虚子

 

絵巻物拡げゆく如春の山        星野立子

 

雪とけて村一ぱいの子どもかな     小林一茶

 

野遊びのひとりひとりに母のこゑ    橋本榮治

 

此秋は何で年寄る雲に鳥        芭蕉

 

もてなしの白魚飯も母心        高野素十

 

母訪へば母が菜飯を炊きくれぬ     星野麥丘人

 

母の日のてのひらの味塩むすび     鷹羽狩行

 

少年の見遣るは少女鳥雲に       中村草田男

 

死にたれば人来て大根煮きはじむ    下村槐太

 

山の色釣り上げし鮎に動くかな     原石鼎

 

冬菊のまとふはおのがひかりのみ    水原秋櫻子

 

湯豆腐やいのちのはてのうすあかり   久保田万太郎

 

てのひらをかへせばすすむ踊りかな   阿波野青畝

 

づかづかと来て踊子にささやける    高野素十

 

流燈や一つにはかにさかのぼる     飯田蛇笏

 

雪空へ吸いあげらるるどんどかな    矢島渚男

 

夏草や兵どもが夢の跡         芭蕉

 

ままごとの飯もおさいも土筆かな    星野立子

 

あはれ子の夜寒の床の引けば寄る    中村汀女

 

咳の子のなぞなぞあそびきりもなや   中村汀女

 

栗飯を子が食ひ散らす散らさせよ    石川桂朗

 

初風呂や花束のごと吾子を抱き     稲田眸子

 

平凡な日々のある日のきのこ飯     日野草城

 

煮凝へともに箸さす女夫かな      黒柳召波

 

夕顔の一つの花に夫婦かな       富安風生

 

天高く畑打つ人や奥吉野        山口青邨

 

種蒔ける者の足あと洽しや       中村草田男

 

ものの種にぎればいのちひしめける   日野草城

 

さまざまの事おもひ出す桜かな     芭蕉

 

咲き満ちてこぼるる花もなかりけり   高浜虚子

 

秋深むひと日ひと日を飯たいて     岡本眸

 

遅き日のつもりて遠き昔かな      与謝蕪村

 

大寒の埃の如く人死ぬる        高浜虚子

 

念力のゆるめば死ぬる大暑かな     村上鬼城

  

牡丹雪その夜の妻のにほふかな     石田波郷

 

除夜の妻白鳥のごと湯浴みをり     森澄雄

 

ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜    桂信子

 

七夕や髪濡れしまま人に逢ふ      橋本多佳子

 

雪はげし抱かれて息のつまりしこと   橋本多佳子

 

旅人と我が名よばれん初しぐれ     芭蕉

 

わが山河まだ見尽さず花辛夷      相馬遷子

 

誰が触るることも宥さず牡丹の芽    安住敦

 

ちりて後おもかげにたつぼたん哉    与謝蕪村

 

一の橋二の橋ほたるふぶきけり     黒田杏子

 

新茶汲むや終りの雫汲みわけて     杉田久女

 

新海苔の艶はなやげる封を切る     久保田万太郎

 

美しき緑走れり夏料理         星野立子

 

そら豆はまことに青き味したり     細見綾子

 

新走その一掬の一引を         稲畑汀子

 

わが死後へわが飲む梅酒遺したし    石田波郷

 

野ざらしを心に風の沁む身かな     芭蕉

 

菜の花や月は東に日は西に       与謝蕪村

 

雲の峰一人の家を一人発ち       岡本眸

 

九十の端を忘れ春を待つ        阿部みどり女

 

再びは生れ来ぬ世か冬銀河       細見綾子

 

かぎりある命のひまや秋のくれ     与謝蕪村

  

冬蜂の死にどころなく歩きけり     村上鬼城

 

露の世は露の世ながらさりながら    小林一茶

 

糸瓜咲て痰のつまりし仏かな      正岡子規

 

去年今年貫く棒の如きもの       高浜虚子

 

白梅に明くる夜ばかりとなりにけり   与謝蕪村

 

山茶花やいくさに敗れたる国の     日野草城

 

大和また新たなる国田を鋤けば     山口誓子

 

病雁の夜さむに落ちて旅ね哉      芭蕉