「緑川行燈」俳句
俳句には、豊かな日本語でしか表現できない
日本人の季節感、自然への畏れや憧れ、
生活や人生への愛情といった
日本人本来の心の在り方や感じ方が、
長い年月をかけて、流れ込み、降り積もっています。
俳句には、現代の日本人にもう一度、
大切なことや本来の生き方を思い起こさせてくれる、
そんな力があるのではないでしょうか。
「緑川行燈」俳句は
これまでの多くの俳人たちに詠まれてきた
日本の故郷の美しい自然の風景、
日本人の謙虚で慎ましい生活、
人生や自然や生活への愛情と豊かな感性を
思い出させてくれる俳句をご紹介していくことで
これから少しずつ消えていってしまうかもしれない故郷から
大切なことを見失ってしまった現代の日本の社会へ
最後のメッセージを伝えていくための企画です。
企画主催者の好きな俳句を毎月3句~5句、追加掲載しています。日本人の心に寄り添う過去から現代の名句ばかりです。ホームページの「旅行」ページの緑川流域の美しい風景や懐かしい生活を写した素敵な写真のスライドショーと合わせて、素敵な心の旅のお時間をお過ごしください。
また、弊社では「奥の菊道」俳句会というインターネット上での俳句会を
企画・運営しています。どなたでもご参加いただけます。
「奥の菊道」企画:okunokikumichi.com
旅に病んで夢は枯野をかけ廻る 芭 蕉
遠山に日の当りたる枯野かな 高浜虚子
生き変はり死にかはりして打つ田かな 村上鬼城
歩み来し人麦踏をはじめけり 高野素十
外にも出よ触るるばかりに春の月 中村汀女
春風や闘志いだきて丘に立つ 高浜虚子
絵巻物拡げゆく如春の山 星野立子
雪とけて村一ぱいの子どもかな 一 茶
野遊びのひとりひとりに母のこゑ 橋本榮治
銀杏ちる兄が駈ければ妹も 安住敦
少年の見遣るは少女鳥雲に 中村草田男
遠足の女教師の手に触れたがる 山口誓子
算術の少年しのび泣けり夏 西東山鬼
もてなしの白魚飯も母心 高野素十
母訪へば母が菜飯を炊きくれぬ 星野麥丘人
皸をかくして母の夜伽かな 一 茶
母の忌や其の日の如く春時雨 富安風生
父母の亡き裏口開いて枯木山 飯田龍太
死にたれば人来て大根煮きはじむ 下村槐太
山の色釣り上げし鮎に動くかな 原石鼎
此秋は何で年寄る雲に鳥 芭 蕉
悲しみの七日々々に秋深み 本田豊子
冬菊のまとふはおのがひかりのみ 水原秋櫻子
湯豆腐やいのちのはてのうすあかり 久保田万太郎
柚子湯沁む無数の傷のあるごとく 岡本眸
てのひらをかへせばすすむ踊りかな 阿波野青畝
づかづかと来て踊子にささやける 高野素十
祭笛吹くとき男佳かりける 橋本多佳子
流燈や一つにはかにさかのぼる 飯田蛇笏
水かけてすぐ湯気となる裸押し 能村登四郎
山寺や五色にあまる花御堂 蓼 太
ままごとの飯もおさいも土筆かな 星野立子
あはれ子の夜寒の床の引けば寄る 中村汀女
咳の子のなぞなぞあそびきりもなや 中村汀女
栗飯を子が食ひ散らす散らさせよ 石川桂朗
雨ごもり筍飯を夜は炊けよ 水原秋櫻子
大根が一番うまし牡丹鍋 右城暮石
豆飯食ふ舌にのせ舌に力入れ 石田波郷
膝に来て模様に満ちて晴着の子 中村草田男
平凡な日々のある日のきのこ飯 日野草城
煮凝へともに箸さす女夫かな 召 波
夕顔の一つの花に夫婦かな 富安風生
芋食ふや大口あいていとし妻 飯田蛇笏
天高く畑打つ人や奥吉野 山口青邨
種蒔ける者の足あと洽しや 中村草田男
ものの種にぎればいのちひしめける 日野草城
さまざまの事おもひ出す桜かな 芭 蕉
咲き満ちてこぼるる花もなかりけり 高浜虚子
かの世へと君をつつみて花吹雪 桂信子
今朝引きし鶴にまじりて行きたるか 大峯あきら
秋深むひと日ひと日を飯たいて 岡本眸
秋深し人に祈りの深ければ 稲畑汀子
遅き日のつもりて遠き昔かな 蕪 村
大寒の埃の如く人死ぬる 高浜虚子
念力のゆるめば死ぬる大暑かな 村上鬼城
牡丹雪その夜の妻のにほふかな 石田波郷
除夜の妻白鳥のごと湯浴みをり 森澄雄
ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜 桂信子
七夕や髪濡れしまま人に逢ふ 橋本多佳子
雪はげし抱かれて息のつまりしこと 橋本多佳子
羅や人悲します恋をして 鈴木真砂女
身にしむや亡妻の櫛を閨に踏む 蕪 村
此の秋は膝に子のない月見かな 鬼 貫
夏草や兵どもが夢の跡 芭 蕉
名月や畳の上に松の影 其 角
月さして一間の家でありにけり 村上鬼城
大紅葉燃え上がらんとしつゝあり 高浜虚子
わが山河まだ見尽さず花辛夷 相馬遷子
誰が触るることも宥さず牡丹の芽 安住敦
ちりて後おもかげにたつぼたん哉 蕪 村
雉子の眸のかうかうとして売られけり 加藤楸邨
野ざらしを心に風のしむ身かな 芭 蕉
新茶汲むや終りの雫汲みわけて 杉田久女
新海苔の艶はなやげる封を切る 久保田万太郎
美しき緑走れり夏料理 星野立子
そら豆はまことに青き味したり 細見綾子
新走その一掬の一引を 稲畑汀子
わが死後へわが飲む梅酒遺したし 石田波郷
鈴虫のいつか遠のく眠りかな 阿部みどり女
春眠の覚めつゝありて雨の音 星野立子
春雨に呼ぶ子をもたず立ち眺む 桂信子
雲の峰一人の家を一人発ち 岡本眸
雪嶺のひとたび暮れて顕はるる 森澄雄
九十の端を忘れ春を待つ 阿部みどり女
九十年生きし晴着の裾捌 鈴木真砂女
旅人と我が名呼ばれん初時雨 芭 蕉
ねむりても旅の花火の胸にひらく 大野林火
ほしいまゝ旅したまひき西行忌 石田波郷
げんげ田のうつくしき旅つづけけり 久保田万太郎
桃食うて煙草を喫うて一人旅 星野立子
菜の花や月は東に日は西に 蕪 村
再びは生れ来ぬ世か冬銀河 細見綾子
此道や行く人なしに秋の暮 芭 蕉
かぎりある命のひまや秋のくれ 蕪 村
秋の暮水のやうなる酒二合 村上鬼城
冬蜂の死にどころなく歩きけり 村上鬼城
露の世は露の世ながらさりながら 一 茶
雁やのこるものみな美しき 石田波郷
糸瓜咲て痰のつまりし仏かな 正岡子規
去年今年貫く棒の如きもの 高浜虚子
地震の国に生きてゑんどう剝いてをり 桂信子
山茶花やいくさに敗れたる国の 日野草城
大和また新たなる国田を鋤けば 山口誓子
白梅に明くる夜ばかりとなりにけり 蕪 村
病雁の夜さむに落ちて旅ね哉 芭 蕉